柴支所
小柴のシャコ漁、待望の解禁
激減している江戸前のアナゴの現状

平成22年5月16日

待望の解禁
 5月16日、横浜漁協柴支所(通称、小柴)が、4年9ヶ月に及ぶシャコの底引き網漁の前面禁漁を解除した。15年ほど前から漸減していた漁獲量が、10年ほど前から著しく激減し始め、5年前頃には絶望的に獲れなくなってしまっていたのだ。この頃には出漁しても油代にもならず、そのたびに赤字の積み重ねとなり、出漁を見合わせる漁師が増えていたのだった。
 平成20年の資源回復を目標に、神奈川県の全漁協が3年間の禁漁に踏み切った。この時、千葉県側は禁漁に同調しなかったのだが、後に神奈川海面の漁場だけは禁漁海域にすることに同意した。しかし冬場のスミイカの底引き網漁の時には、シャコの生息場所と漁場が重なるために、海底に潜っているシャコを結果的に獲ってしまうことがあるという。禁漁に入ってからも月に2回は試験獲りが行われ、状況の把握が行われていった。
 そして3年後の平成20年、資源は期待されたほどには回復せず、解禁は繰り延べすることになった。翌21年は前年を下回るような結果となり、継続されてきた月に2回の試験獲りも途中で中止にされたほどであった。そして今年、4月に入ってからの県の試験獲りの調査結果では「完全復帰には遠い」との分析であったが、組合はいつでも中止するとの姿勢で漁の再開に踏み切ったのだった。5月に入るとマスコミが再開の夢を乗せて報道し始めた。小柴のシャコの復活は、東京湾全体の再生をも感じさせる明るいニュースとなった。

再度の小柴行
 5月8日早朝、築地で仲買の福地さんから5月16日に小柴のシャコ漁が解禁されると言うニュースを伝えられた。朝日新聞も取材に入るのだと言う。5年におよぶ禁漁と、久方ぶりの解禁の喜びを共に味わうために、一緒に小柴へ出かけて行くことになった。

5月16(日)晴天
 金沢八景7時18分着。午前7時30分、タクシーにて柴漁港着。
 晴天微風、絶好の漁日和であった。柴支所脇の掲示板に、最近のシャコの試験獲りの結果が発表されている。支所周辺、水揚げの検量場もまだ時間が早いために人影もなく閑散としていたが、9時になるとアナゴの水揚げと検量が始まると言う。
 時間がまだたっぷりとあるので、今日の午後から訪ねる予定の「神奈川県あなご漁業者協議会会長斎田芳之さん」の番小屋に行くことにした。漁協の右側、漁港に沿って長屋風に連なる番小屋で、斎田さんと斎田さんのお父さんとが2人でせっせとアナゴを開いていた。卵持ちのアナゴを見つけて、前から感じていたアナゴの産卵場所の疑問をぶつけていった。

小柴の江戸前のアナゴ
神奈川県あなご漁業者協議会会長の斎田芳之(54)さんからの聞き書き
 本日の柴支所訪問の目的にはシャコと共にアナゴの取材も含まれていた。最近の江戸前アナゴの築地市場への入荷の少なさは異常なほどで、江戸前のすし屋にとっては大問題となっているのだ。斎田さんはアナゴの筒漁の漁師だが、三崎の水産試験場とも協力し、次から次へと新しい研究課題に挑戦し、ネット上でも多々素晴らしい研究成果を発表している。
 小柴支所のアナゴは前日に獲ったものを、丸一日海中の網に入れた状態で寝かせ、筒漁の餌となっているイワシをほとんど全て消化させてから支所の検量場に水揚げする。だから築地市場に入荷するアナゴは、漁獲してから丸2日経過したものとなる。流通過程で死んでしまったアナゴの腹中にある餌の腐敗による悪臭と汚染を防ぐことが出来るのだと言う。
 2、3年前から江戸前のアナゴが目立って獲れなくなっているのだが、その現状と原因、資源再生の方途などについて斎田さん聴いていった。

アナゴの筒漁
筒漁とは?
 
筒漁は神奈川県水産技術センターの元研究員清水たか(言辺(ごんべん)に旬)道さん(64)と水産試験場と斎田との協力研究の中で開発され、斎田さんが最初に試みた漁法だと言う。昔の延縄漁、底曳き網漁、篭漁に替わって、今では東京湾内湾全域にわたってのアナゴ漁を代表する漁法となっている。
 長さ80cm、口径10cmの筒を30m間隔で、1回に600本仕掛け、一晩置いて翌朝回収する。1本に平均2本から3本入っていると言う。神奈川県での従事漁業者は約247名。金沢支所でも2隻操業。筒漁は水曜日と日曜日を休漁。底曳き漁は火曜日と土曜日を休漁とする。出漁日が時化の時には随時移行する。


シャコの底曳き網漁

 最盛期には、全漁獲量の約70%がシャコで、網は2重になっている。マコガレイ、スミイカ、スズキなど、様々な魚が獲れるのだが、後方の網目の細かい方にシャコが集中的に入るようになっている。

質問(1)最近のアナゴは痩せてきている。昔のように旬に入ると頭が小さく見えるほどに胴体がむっちりと太り、身肉が飴色に色付いているアナゴを、ほとんど見かけなくなっているのはなぜか?
回答…海が痩せてしまい、餌となる栄養分が不足しているのだろう。

質問(2)海が痩せた主原因はなにか? 貧酸素水の青潮の発生と下水道の生活排水の浄化に使用される塩素が、東京湾の肥沃さを損なっているのではないだろうか?(塩素は有機物と化合すると毒性を発生させると言われる。)
回答…下水道の浄化に使用される塩素の影響もあるのかもしれない。富岡に下水処理場が完成してから周辺のタコが全滅してしまった。発電所の排水溝の貝類の付着防止にも使用されている。(他にはどのような使用例があるのだろうか?)

質問(3)アナゴの漁獲量激減の原因は乱獲なのではないか? 1996年(平成8年)の年間漁獲量67tから2005年(平成17年)には121tに激増した。これは180.5%の増量、約2倍弱となっている。この9年間には、底曳き網漁(アカガイ、トリ貝、マコガレイ、イシガレイ他)、刺し網漁(スミイカ、マコガレイ、クルマエビ他)の不振によって、底曳き網漁船からアナゴの筒漁への大幅な転換があった。
 アナゴに対する漁獲努力量の激増があったのだ。その結果アナゴの90%ほどが筒漁で獲られるようになり、小型底曳き網漁による漁獲は10%ほどに激減した。しかし、その後19年頃からアナゴは大不漁年に突入してゆく。
 その間、筒漁の筒の改良によって、小さなメソッコが筒から効率よく逃げ出せるようになった。だが、大量の筒漁船による効率の良い「よいばき操業」(夕方筒を仕掛け、翌朝回収する)への転換は、1本の筒の効率が従来の通常操業よりも2倍近くも効率が良くなっていると言う。これらも資源の再生を脅かす乱獲の状態を促してしまっているのではないだろうか。しかも値が安く、商品価値の低いメソッコさえもが、最近高値で売れるようになったために、海へのリリースの選別が甘くなっているらしい。
回答…漁獲努力量の制限 1986年(昭和62年)から1992年(平成4年)にかけ、千葉・神奈川が6月から9月に掛けて毎週火曜日を休漁にするのを見習い、柴漁協では週2回(水曜と日曜)の休漁日を設けた。

質問(4)アナゴの油臭と泥臭さの原因はなにか?
回答…浅場に生息するアナゴは、油汚染されている可能性が多くなる。底曳き網で獲るアナゴは、網で海底のヘドロ、砂泥が撹乱されるために、舞い上がる泥やヘドロ、油を飲み込んでしまうことも考えられる。小柴のアナゴは海ホタルの外側の深場で獲られるために、油、ヘドロ臭の被害は少ない。

江戸前のアナゴの生態
成長と産卵
 3月から4月に1cmほどのシラスが東京湾に入ってくる。9月には25cmほどのメソッコに成長、12月には30cmに成長する。翌年の4月から5月には出荷サイズの35cm以上に成長する。毎日の店での仕込みの中で、通年にわたって多々体内で見かける卵と白子は未熟卵で、この卵が産卵され孵化するのではないと言う。60cmから80cmの最大級の大きさに成長してから湾外に出て、沖縄近辺へと南下して産卵するとされる。しかも年間に数回も産卵するらしいと言われる。

小柴と子安との餌の違いと卵巣の色の違い
 小柴の筒漁の餌はイワシで、子安の餌はイカであるため、仕込みをしたアナゴの餌の種類を見ると産地漁協の違いを見分けることが出来る。小柴の卵は白っぽく、子安の卵は赤っぽい。原因は不明だが、小柴では海ほたるの外で操業し、子安では内側でやるため、その影響が出ているのかもしれない。あるいは小柴では海の中で1日過ごさせ、餌を消化させてから水揚げするためだろうか? 子安はそのまま出荷するのだろうか? 体内に残留する餌の量はほぼ大差ない。

操業方法の変化
 最近は“よいばき操業”と言って、筒を夕方に仕掛け、朝方に引き上げる漁が主流となっている。以前の昼間の通常操業よりも1本の筒の効率が2倍ほどに良くなる。
 アナゴは4月から10月の漁期間中に、年間漁獲量の80%ほどを獲る。浜値はキロ単価1,300円から1,500円

資源保護
 資源保護のために、筒に小さな穴を開け、小さなアナゴが逃げることが出来るようにして、メソッコ(アナゴの子供)の乱獲を防ぐ工夫がされている。平成10年には穴の大きさを直径14mmに拡大設定、値段の安いメソッコを、さらに大量にその穴から逃げられるようにしている。

甘い漁獲制限の緩和
 しかし最近ではメソッコを天ぷら屋が大量に使用するようになり、それなりに高値が付くようになった。5月から解禁になる底曳き網漁の網目の大きさが細かくなり、小さいものも海にリリースされずに漁獲されるようになり、選別がルーズな状態で市場に流通してゆく。乱獲防止の保護制限が破られてきている。

筒漁の開始
 筒漁は昭和の始めに神奈川県水産技術センターで工夫され、試行錯誤の末に、昭和57年から実用化された。最盛期には1日に30kgから50kgあった。漁場の水深は23ひろ位いとなる。


小柴のシャコ漁、4年9ヶ月ぶりの解禁

小山紀雄(63)、横浜市漁業協同組合長の加工場にて 
 本日は、水揚げから自宅の加工場での処理作業の全てを小山組合長と行動を共にして見学、勉強させてもらうことになった。
 持ち船の小型底曳き網船は「治平丸」。本日の解禁日初日の漁では網を5回入れて漁獲量は2樽であった。水揚げ直後に自宅の加工場に直行、釜場は浜から5分の距離、まだビンビンに生きている状態で茹でてゆく。小柴では築地の荷受会社の大都と東水に約70%出荷する。他は横浜市場にも出荷。小柴では鎌倉時代からシャコを食べていたと言われる。

加工とツメの出荷
 小柴支所でのシャコ漁は小型底曳き網船で操業される。
 昼ごろに水揚げされるシャコは、柴支所の横にある検量場で検量点検されることは無く、漁師達は、速やかに自宅にある加工場に搬入する。シャコは漁師がそれぞれに持っている自分の加工場で加工され、組合の集荷場に供出される。
 まだビンビンに活きているシャコを釜で茹で上げる。生きている内に茹でないと、殻が剥きにくくなり、旨みも飛んでしまうからだ。ステンレスの調理台の上にばら撒かれた大量のシャコは、まず頭を取り外す。ハサミで大胆に胴体の両側の殻を切り捨て、一気に剥いてゆく。サイズは特大・大・中・丸中の4サイズに分類し、プラスチックの皿に並べてゆく。そして最後に頭部と一緒についている前足の先端手前の部位に付いている「ツメ」を剥いてゆく。
 シャコのツメを作る仕事は手間の掛かる特殊な技術で、ほとんどの産地では剥く技術がなく、出荷することが出来るのは小柴と大分県行橋、宮城県石巻あたりだけとなる。

釜場にて…茹でと加工

 燃料は火力の強い灯油。 真水にほんの少し塩を入れる。4分から5分。茹でたての暖かい内に剥いてゆく。シャコは生きている内に茹でないと殻が綺麗に剥けない。
 美しく旨そうな赤褐色の発色と白い脂を体表に浮き出させる茹で方は小柴独自の技法とされる。
丸中サイズ…二年生以下 。
中サイズ…2年から3年生の大きさ。
大サイズ…3年生、早いものでは2年生。
特大サイズ…大サイズから半年位で、3年半生位。
 操業日は禁漁前の二操一休から、週二日に、1隻の出荷枚数も一日最大80枚と禁漁まえよりも厳しいものとした。

解禁後、3漁日の収穫量

子安・生麦から小柴へ漁場と技術の伝承
 1962年の子安・生麦漁協の漁業権放棄によって、子安・生麦の漁場、底曳き用のシャコ網、船、ボイル加工の技術までを含めた一切合財全てを譲り受け、漁業権放棄の道から継続への道を選択していった。当初、シャコを蒸すことにも挑戦したが、失敗した。火力が足りなかったのかもしれないと言う。
 この時期、小柴では横浜市の大規模な埋め立て政策によって海苔の養殖漁業が大きなダメージを受けていたため、海苔養殖に替わる格好の仕事として受け入れられ、小柴の最大の漁獲収入となった。当時の漁師の平均年収は1,000万円を超えたと言われていた。(現在の日本全国の漁師の平均年収は300万円を切っていると言われる)
 現在の小柴漁師の平均年齢、60歳以上。最高齢、80歳。

野島海岸でのアサリの驚異的生産量
 野島海岸の潮干狩りのアサリの収穫量は一日20トンにのぼる。これは全て天然自然に獲れるもので、人工的に撒くことは一切していない。驚異的なアサリの生産力に脱帽だ。

活けシャコの剥き方
 上下の殻だけ外し、ひたひたの塩水のなかに1晩冷蔵庫の中で漬けておくと綺麗に剥ける。

柴支所の漁獲量の激減の現状
シャコ…横浜市漁協、金沢、柴支所
 1996年(平成8年)に982tあったものが、2005年(平成17年)には57t、94.8%減となっている。
 4年9ヶ月にわたるシャコの底曳き網禁漁のため、漁師は秋口から晩秋まで、サバの1本釣り漁もしている。サバが幸運にも再び豊漁期に入ってきており、富津の漁師と一緒に釣っている。しかし収入は激減していると言われる。

アナゴ
…横須賀東部漁協

 1996年、28tあったものが、2005年には0(1t未満)になり、 100%減。
…柴・金沢支所 
 1996年(平成8年)、67tあったものが2005年(平成17年)には121t。180.5%増となっている。
 底曳き網漁(アカガイ、トリ貝、マコガレイ、イシガレイ他)、刺し網漁(スミイカ、マコガレイ、クルマエビ他)の不振によって、アナゴの筒漁への大幅な転換があった。

ミルガイ
 富津漁協の潜水器漁船が1隻操業している。潜水士は2名、交代で潜る。最近は500gから600gのサイズは全く獲れず、大きくても手のひらサイズ以下のものしか獲れない。
「もう2年から3年ほど待てば、2倍から3倍の値段になるのに」と言うと、「社長の言われる通りにやっているだけだ」という返事であった。漁日は1週間に3回から4回。ミル貝は水深6mくらいで、一日200kg、白ミル貝100kgの漁獲制限。「長寿丸」長内さん。

クルマエビ
 刺し網で獲っていたが、最近の激減のために採算が合わず、全くやっていない。最近では底引き網に掛かるものが全てとなっているが、激減し、ほとんど獲れない状態で、獲れても支所脇にある日曜市場で捌かれてしまうことが多い。築地にはほとんど出荷されない状態となっている。小柴の天然のクルマエビは何故か発色の悪いものが多い。生息場所によるものと思われる。

小山紀雄柴支所、組合長との一答一問
質問(1)中の瀬の掘削、第一海ほうの除去、羽田D滑走路工事着工の影響は?
回答…中の瀬の周辺の縁には、特大サイズのシャコが生息していたのだが、全て削り取られてしまったため、この漁場の特大サイズが獲れなくなってしまった。特大サイズの復活には3年ほどかかるのではないだろうか。

質問(2)築地に出荷される大サイズの大きさのものが、特大サイズとして出荷されてしまっている。価格差のある選別がルーズになっているのはなぜか?
回答…特大サイズが極端に少なくなっているため、無理して特大サイズを作らないように、今回の解禁以降、組合では大サイズと特大サイズを同じ値で受けることにしているのだが、趣旨が不徹底なようだ。

質問(3)子持ちと子無しが混在しているのはなぜか?
回答…産卵がダラダラと7月頃まで続くため、抱卵のシャコと産卵後のシャコが混獲されてしまう。昔は5月頃に一斉に産卵したために、このような現象は起きなかった。産卵後のシャコはすぐにはペタペタにはならないのだが、晩秋の脱皮後のシャコはその時点でペタペタになってしまう。

質問(4)ツメの身肉の甘みが足りないのはなぜか? 生産者である漁師を証明する箱番号の違いにより、甘みの強さが違うので、生産者によって個別差があるようだ。ツメを剥く前に、水に浸けておく作業が甘みを逃してしまっているのではないか? 
回答…ツメを剥く前に、さっと水に浸けると剥きやすくなるのだが、浸す時間がルーズに長くなっているのだと思う。組合員に注意を徹底する。

質問(5)漁獲量と築地での需要バランスが取れてはいない。相対取引で値が決められるシャコも、もう少し値上げの可能性があるのではないだろうか?
回答…今期は築地の荷受会社が、例年よりも1箱に付き50円から100円高値で引き取ってくれている。

質問(6)底引き網漁全てが禁漁となっていたのか?シャコ漁だけか?
回答…シャコの底引き網漁と漁場が共通する魚種のマコガレイと冬場から春先にかけてのスミイカ漁はシャコの禁漁と共に禁止された。他の漁場での底引き網漁は継続された。

質問(7)なぜ漁日が日曜日と月曜日なのか? アナゴの筒漁との兼ね合いはどうなっているのか?すし屋としては、漁日を離してもらいたいのだが。
回答…他からも要望があり、漁日を変更する可能性は考慮中。アナゴの筒漁とは漁場が違うので重なることは無い。

質問(8)禁漁以外に、再生のための努力はなにかしたのだろうか?
回答…特別には何もしてはいない。

質問(9)晩秋時の脱皮前に獲れた、最高に甘いシャコは何処へ行ってしまったのか?
回答…同時期にタチウオとイボダイ漁が重なるため、漁獲採算がシャコよりも有利だと、シャコ漁はされないことになる。禁漁に入る頃には、特にその傾向が強くなっていた。

質問(10)脱皮をしないということはあり得ないことなのか?
回答…必ず脱皮するのだが、秋の貧酸素水域の発生などがあると、脱皮のために湾外の深場へと移動してしまう。
 
質問(11)一日70枚前後の漁獲量で採算が採れるのだろうか?
回答…底引き網漁は、シャコだけではなく他の魚も混獲されるため、トータルでは採算は採れている。

質問(12)特大サイズが余りにも少ない。もう1年禁漁にし、3年生の特大サイズに育てた方が高値で売れ、効率が良いのではないか?
回答…もう1年禁漁にしても、必ずしも大サイズが沢山獲れるようになるとは言えない。貧酸素の青潮の発生に影響されることが多い。

質問(13)昔、年収1,000万円以上と言われた小柴の現在の平均年収は?
回答…30年前頃、船が1隻1,600万円で買えた時代に、2,500万円から3,000万円位の収入があった。1週間で100万円になることもあった。現在の3倍ほどになっていた。(年収が500万円を切っているとも言われる)

質問(14)2月頃、スミイカの入荷が急に少なくなるのはなぜか?
回答…スミイカ漁が少なくなる頃に、最近では中国バブルによって高値を付けるナマコ漁に移っていくため、スミイカ漁はさらに少なくなる。

質問(15)全国的に共通する近年のシャコの大不漁の原因は? 海水温の上昇、 レジームシフトの影響は?
回答…水温の上昇、生息場の破壊、乱獲、生息環境の悪化等が考えられる。合流式下水道の欠陥による海の汚染も大きな原因となっている。
 毎年の台風一過の頃、合流式下水道の欠陥による大量の生活排水の湾内放流がもたらす大腸菌汚染のため遊泳禁止となる。大雨、豪雨時の大量放流は、年に15回ほどもあり、その度に海が汚染され、東京湾の富栄養化の最大の原因となり、赤潮の発生、さらには青潮の原因にもなり、また塩水濃度の極端な希薄化による二重の魚介類の大量死滅現象を生じさせいる。

質問(16)子持ちの雌と雄シャコの分布と時期は?シャコは雌雄一体なのだろうか?
回答…シャコは雌雄一体で、身体に栄養が付いてくるとメスに変化してゆくと言われる。だから夏場に獲れるシャコはほとんど全部子持ちのメスとなるようだ。晩秋の脱皮前頃になるとメスとオスは半々ぐらいになるようだ。

8月7日(土)久しぶりに小山組合長に電話をする。
「今期の小柴のシャコ漁は、最初からの決めとして7月〜8月の夏場と冬場は休漁とし、情況を見ながら9月半ば頃から10月にかけて再度やることになっている。今期は小柴近辺の漁場では比較的良好だったのだが、横浜港方面の漁が少なかった。そして7月のアナゴの底曳き網漁の解禁と共にアナゴ漁に移っていったのだが、今年はクラゲが多く、網に大量に入ってしまうために、網が浮いてしまい、アナゴの漁獲が少なくなっている。
 県によって定期的に行われている試験獲りのシャコは、小さめだが比較的多く順調に獲れて入る。例年の夏の神奈川県側の海では、青潮である貧酸素海水の発生が多いのだが、今年は例年になく発生が少ない。風の影響で秋になると神奈川県側での青潮はほとんど発生せず、千葉県側で頻発することになる。夏場に青潮にやれてしまうこの小さめのシャコが無事に秋まで生き延びてくれれば、9月半ばに始まるシャコ漁は楽しみなものとなり、来年の漁も期待されている」

平成22年8月7日

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