富津漁港
富津漁業協同組合
千葉県富津市富津2035番地の74
食堂「山静」 (有)吉野家を訪ねて

平成22年5月2日・3日


富津漁協
 富津漁協では、10年ほど前に漁協での入札制度を廃止した。漁師は獲った魚介類を地元の中卸業者に直接納め、その中卸が築地などの各市場にその日のうちに搬送する。翌朝、市場での値が決まるとその値段に沿った口銭を取ってから、漁協に仕切った分を現金で納める。漁協はさらに諸経費と口銭の5%を引いた残りを漁師に渡すことになる。
 富津では、大手の中卸が2社ある。昔は漁協扱いの出荷が多かったのだが、中卸し扱いの方が魚の扱い、出荷体制も合理的で効率が良く、合理化の下に、魚介類は全て中卸業者を通しての委託販売となった。

組合の主な漁業
潜水器漁業   アサリ・バカガイ・ミル貝・白ミル・タイラ貝・大アサリ・他
小型底曳網漁業 スズキ・カレイ・ヒラメ・甲イカ・トリ貝・他
刺し網漁業   スズキ・カレイ・ヒラメ他・クルマエビ・他
巻き網漁業   イワシ・コノシロ他
腰タフ漁業   アサリ
たこつぼ漁業  タコ
のり養殖    ノリ
釣漁      3年前頃より浦賀水道の湾口付近で、8月下旬頃より10月頃まで、マサバが釣れるようになった。松輪ブランドになる海域のサバで、高値で取引される。

課題 
(1)4、5年前頃より、富津近辺のスミイカの生態に異変が起きている。通常は4月から5月には産卵がほぼ終わり、寿命が1年生のスミイカは産卵後には全て死んでしまい、沖にプカプカと浮いているのが見られるころになる。そのためにこの時期から10月頃の新イカの入荷時期までは、江戸前のスミイカは市場からは消えてしまうことになる。しかし初夏になっても抱卵せず、秋口になるまで次から次へと交代に抱卵してゆくスミイカが、継続的に入荷してくるようになった。
 これは、4月から5月頃に産卵し、約半年後の9月半ば頃に新イカとして、その年の初ものとして獲られ始め、10月の半ば頃にはあっと言う間に中サイズほどに成長してゆくことになるスミイカが、12月から1月に入ってもまだ新イカの状態で漁獲される現象と合い通じるものと言える。
 しかしこの遅れてきた新イカはどう言うわけか身肉が痩せ、魅力の無いものが混じることが多い。毎年、季節の走りの新イカとして最初に築地に入荷し、その後も次から次へと継続的な産卵によって、1月頃まで新イカの入荷が続いてゆく、摩訶不思議な現象を見せる鹿児島県出水産と同じような生態系が生じ始めているようだ。
 出水の場合は、不知火湾が内海のために、水温の変化が少なく、延々と産卵の最適温度が維持されているからだと言う。では富津でも昨年は同じような現象が生じたのだろうか?

(2)ミル貝、アサリ、アオヤギ、海苔の生産量激減の今年の状況はどうなっているのだろうか?

(3)漁師の老齢化、後継者の問題はどうなっているのだろうか?

(4)3月から4月頃、シロギスが獲れなくなるのはなぜか?

食堂「山清」にて
 水産庁の上田勝彦さんの紹介で訪ねる。
 ゴールデンウイークのど真ん中である富津海岸は潮干狩りシーズンの最盛期だった。今年の連休は中潮にあたり、昨年の大潮と共に、潮干狩りに最適な潮周りなのだと言う。
 漁港の直ぐ前にある「山静」さんは大繁盛で、店内は先客万来のお客さんで常に満席で、話を聞くと言う状況ではなく、30坪ほどある調理場の一隅で、大忙しの調理の合間合間の隙間を縫って、「山静」さんの旦那の話を聞くことになった。1本150gは十分にあるアナゴの天ぷらが2本、丼から大胆にもはみ出している大アナゴ丼定食と生ビールを飲みながらの聞き取り、勉強となった。

 酒タバコは一切やらないと言う72歳になる旦那は、元気満々で、毎夜1時半頃には起きて60kgものアナゴを開いてから開店するのだという。
 食堂は午後4時半には閉店する。潮干狩り客が皆帰ってしまうからだ。この時期は超忙しいが、普段の雨の日などは店を開けない。待っていてもお客さんが全く来ないことが多いからだ。この店は旦那が8年前に天ぷらの修行をして開店したのだと言う。それまでは潜水器漁の漁師で、アナゴ、シロミル、アオヤギ、アサリ、トリ貝、ナマコ等を獲っていた。潜水器漁は20mの深度を常時潜っていると潜水病になる可能性があり、年取ってから間接の節々が猛烈に痛くなる病が出てしまう人がある。

ハマグリ・アカガイ・タイラ貝・ミル貝・トリ貝・アオヤギ
 昭和40年頃のトリ貝は、春先の3月には、たったの18日間の漁で1000万円にもなったことがあった。当時の金としては信じられないほどの金額だった。この頃はミル貝、アカ貝も一斗缶単位での築地への出荷であった。それほど獲れたのだ。

ハマグリ
 内湾に棲息するハマグリ(ヤマトハマグリ)は外海で獲れるチョウセンハマグリと異なり、柔らかく甘みがあり、珍重されたが、これらの貝の中では1番最初に絶滅していった。

アカガイ
 みごとな朱色と心地よく柔らかな食感と磯の香りは、他産地の追従を許さない美味のもので、地玉(じだま)と呼ばれ、江戸前の最高のアカガイとして珍重された。

ミル貝
 真っ白な肌色と軽快な歯応えを伴う強い甘みは、江戸前のミル貝特有のものであった。

 しかし乱獲と、その後の環境破壊と海の劣化により、ミル貝、アカガイ、ハマグリ、タイラ貝は40年代後半頃までにはみな絶滅していった。
 平成8年、その中でミル貝だけが奇跡的に復活したのだった。この復活は東京の高級すし屋達を欣喜雀躍させた。
 江戸前のミル貝は他の産地にない甘みと旨みを持っているからだ。そして他の貝たちの復活も期待されたのだが、やはりあり得ないことであった。そしてやっと奇跡的に復活したミル貝も、資源の再生を上回るほどの乱獲気味の漁獲によって、再度獲れなくなってきている。

アオヤギ、アサリ、トリ貝
 やはり漁獲量が激減している。
 潜水器漁は潜水した漁師が小さなポンプで圧縮空気を海底に噴射し、舞い上がった貝を腕に抱えた「すかり」と呼ばれる網ですくって獲ってゆく。その噴射が、さらに強烈なものに改良され、海底の砂泥を50cmほども掘ってしまうことにより、1回で当時の5倍からの量を収穫してしまうようになった。
 砂泥は広範囲に舞い上がり、潮に流されてしまうこともある。そして翌年、その同じ場所では、もう貝が全く獲れなくなってしまうことが多い。砂泥の中にいる貝の住処を見事に破壊してしまっているのだ。この乱獲と噴射による好漁場の破壊によって、漁獲量が激減したとき、その反省のもとに、噴射の強さを約半分にすることによる資源回復策をとり、一時期回復の兆しも見えたのだが、最近ではまた、せっかく復活したミル貝を始め、アサリ、アオヤギ、トリ貝までもが絶望的に獲れなくなってきている。
 当然アカガイ、ハマグリ、タイラ貝は未だに復活する兆しは全く見えない。アサリの理想的な漁法である腰巻(腰タブ)漁によるアサリも、東京内湾全体にわたる最近の不漁状況の中で、やはり激減している。

アナゴ
 昔は篭漁で効率が良かったのだが、禁止され、筒漁となった。アナゴの筒漁は1回350本もの筒を沈める。1日30kgほどの漁獲量だが、底引き網漁の休漁日である水曜日と土曜日の2日間だけの漁となる。同時にやると底引き網に引っかけられ、切られてしまうからだ。しかし、最近は極端に獲れなくなり、神奈川県方面にまで行って漁をするようになっているのだが、やはり量は獲れなくなっている。筒は1本1600円、底引き網で途中を切られてしまったら、馬鹿にならないほどの被害金額となる。

シャコ
 神奈川県柴支所(通称小柴)が4年目の禁漁に入っているが、県に正式申請しての禁漁で、県から漁業補償をして貰っている。これは近年農林水産庁が取り入れている漁獲努力量による漁獲規制に対する補償となっている。

「山静」の旦那による富津漁業の再生について
(1)漁師による乱獲の中止(1日の漁獲量の厳密な規制と禁漁期の設定)

(2)破壊された環境(漁場の埋め立てと山の森林伐採による上流から流れ込む栄養源の減少)と海底の再生が必要だ。
 海底の再生…栄養のある山砂を定期的に撒き、破壊されてしまっている海底の砂泥地を再生する。「海のものは陸で肥やしになり、陸のものは海で肥やしになる」と言われる。
 アマ藻も再生する必要がある。昔はアマ藻場には沢山の小魚が棲息していたが、普通の船では、絡み付いてしまって走れないほどだった。秋の風の強い日に藻網船で漁をし、瀬と瀬の間のヌタ場は帆船である「打たせ船」で漁をした。
 森林の再生…植樹をし、広葉樹林の再生を積極的に大々的に進めてゆく。

(3)海苔の生産過程で使用する酸処理のための酸と、下水道処理に使用される塩素による海の汚染。
 酸処理が終わった酸は、昔は水深10m以上の場所で処理することになっていたが、最近ではこの処理は行われなくなってしまった。
 富津近辺での生活排水は下水道が出来てもほぼ海へ垂れ流しの状態で、そのための海の富栄養化が赤潮の原因となっている。糞尿は未だに回収処理業者が4,000tから5,000t級の船で大島沖に廃棄している。

(4)県、国による海の正確な水質検査とその結果による適切な対策を早急にやる必要がある。

漁港にて
「山清」の旦那さんが天ぷら揚げで多忙の間、店の目の前にある漁港を散歩し、水際で片付けものをしていたお母さんと雑談する。

アサリ
 年齢66歳、旦那さんは浅場での人力による理想的な漁法である、腰巻(腰タフ)漁法でアサリを獲っている。後継者は無し。アサリがとにかく獲れなくなった。1日3,000円から4,000円にしかならない。それも月に15日前後しか出来ないので生活が成り立たない。最近では年金を貰っている漁師か、脱サラのアルバイトが多くなっている。とにかく小遣い稼ぎ程度にしかならないからだ。
 アサリ漁は漁師にとってはもう、生活の糧とはならなくなっている。
 最近は築地には全く出荷されない。潮干狩り用として、全て漁協に渡し、海に撒かれている。だから富津海岸での潮干狩りのアサリは全て富津の地のものということになる。
 以前に、木更津の金田湾のアサリを撒いたところ、ウミグモが寄生しているものが混じり大騒ぎとなり退治に苦労したために、今では他産地からの貝は全く撒かなくなった。

シロミル貝、大アサリ
 最近ではアオヤギがほとんど獲れず、ミル貝も極少となってしまった。そのために潜水器漁ではミル貝の代わりにシロミル貝と大アサリを大量に獲っている。乱獲にはなっていないのだろうか。漁業規制はしているのだろうか。

海苔
 今年の富津漁協での海苔の収穫量は意外なほど少なかった。最初は例年になく早くから水温が低くなったために久々の大豊昨と期待されたのだが、水温が下がり過ぎたために、逆に駄目になってしまった。海苔は水温が低すぎても駄目なのだ。毎年、数人の海苔漁師が辞めているが、ことしは10人ほどになるのではないか言う。古くなった機械、道具の修理、最小限の新規買い替えをするにしても、直ぐに2,000万円から3,000万円ほどになってしまう。老齢化と後継者も金もないしで、返済も出来ないからの廃業だと言う。

有限会社 吉野屋(鮮魚販売加工業)にて
 築地市場の中卸、誠和水産の紹介で訪ねる。
 前日、前々日は休漁日のために吉野家さんの事務所には誰もおらず、全く電話が通じなかった。山静さんの紹介で、富津漁港近辺の旅館、民宿に予約を取るが全て満員、青堀駅から富津漁港へは逆方向の1kほど先にある静養園に宿を取る。富津漁港からは車で10分ほどの場所であった。「山清」さんの旦那は、俺んちは夫婦2人だけだから静養園をキャンセルして内に泊まれよと親切に言ってくださったのだが、午前一時半には仕事で起床するとのことで、とってもじゃないが迷惑は掛けられず静養園に帰ることにした。
 夕方の6時になって、やっと吉野家さんの白井正行社長と連絡が取れた。
 明日は午前2時半頃にはスミイカの水揚げ入荷があると言う。そのため今日はもう寝るのだと言う。
 ずいぶん早い時間からの水揚げだ。スミイカはこの他にも昼漁もあり、底引き網、刺し網漁、潜水器漁と、全ての水揚げが終わるのは午後3時頃になると言う。2時出発でのタクシーの予約を頼むと5月の連休中はタクシーの予約は一切取れないことが判った。最初の水揚げ時間に間に合うように、富津から青堀のホテル静養園までの往復、「吉野家」の会長さんが迎えに来て下さった。
 会社の検量場の周りの生簀には様々な魚介類が活け込みされている。ミル貝、シロミル、アサリ、大アサリ、タコ、青ナマコ、黒ナマコ(赤ナマコは獲れない)。

潜水器漁
 30艘ほどあるが、ほとんどがシロミル貝、大ハマグリ、アオヤギを獲っていて、ミル貝は4艘だけがやっている。1艘3人で操業するのだが、船上の漁師は年金を貰っているアルバイトで、給料10万円位、潜水士は20万から30万円の月収。アオヤギはほとんど獲れない。

ミル貝
 最近は激減し、冬場はほとんど漁をしない。1日の漁が少なすぎ採算が合わないのだ。2艘が5月に入ってから夏場に掛けて少しやるようになる。他の2艘は神奈川県の新安浦に出稼ぎに行っている。600gから800gの大サイズの浜値はキロ単価4,000円、小さいものは2,000円から3,000円。地元で死んでしまうアガリも出る。
 築地市場では大サイズは4,600円も付けている。富津のミル貝は、他産地も含めて最高値を付ける最高品となる。
 築地市場で仕入れるミル貝が、5,6年前頃から貝を剥くと、やけに海水が大量に流れ出るようになった。まるで海水を高値で買っているような有様なのだ。産地、または築地の仲買かのどこかで海水を余分に含ませているのではないかと言う疑念が生じるほどだ。
 塩分濃度を薄くすると魚介類は海水を余計に吸収すると言われるが、産地では天然の海水をそのまま使用するため小細工はあり得ないという。

アオヤギ、トリ貝
 両方共に、漁期の制限が全く無く、1年中の潜水器漁による乱獲と、強烈な圧縮空気の噴射による漁場の破壊により、漁獲量は激減している。さらに二年、三年ものに成長する余地の無いほどに毎年獲りつくしてしまっているために、アオヤギ・トリ貝ともに小さいものしか獲れず、商品価値が低くなっている。
 富津でのアオヤギの剥き身加工の大半は木更津の金田湾のものだが、木更津でも無尽蔵に獲れた時代と同じように禁漁期の設定がないために乱獲となり、アオヤギのサイズが大きくなる余地がない。
 富津漁協のアオヤギは、4月、5月に最も太ってくる時期にもかかわらず、さいきんは身肉の充実も見られない。新富津のアオヤギはさらに悲惨で、貝は小さく、身肉は痩せてほとんど商品価値のないものしか獲れなくなってしまっている。ボイル加工に回されている。

シロミル貝(メアマリ)
 ミル貝が大量に獲れている頃には、馬鹿にして全く獲られなかったのだが、絶滅時代のミル貝の代わりに獲られるようになった。最近では潜水器漁の最重要資源となり、乱獲に近いほどに獲りまくられている。浜値がキロ500円、築地の値段がキロ700円〜900円しか付かず、吉野家さんでは経費を引くとほとんど儲けがなく、漁師への奉仕状態となっていると言う。大量に出荷すると値が下がるので、ある程度出荷調整もして値を維持している。

大アサリ(クロッケ)
 昔から棲息してはいたのだが、築地市場では安値しか付かず、長い間獲られなかったのだが、ミル貝の激減に伴って、最近になってまた獲り出すようになった。

アサリ
 漁獲量が激減している。潮干狩りシーズンには、全て漁協扱いで再び海に撒かれるために、市場に流通することはない。
 極少サイズで漁獲制限されているサイズのものも、密漁で漁獲され流通している。5月から6月頃に産卵するため、この時期に海水の中に入れて築地に送と、少しでも温度が上がると産卵が始まり、海水が真っ白になり嫌がられることが多い。
 数年前より、東京湾内湾のアサリは全て大不漁となっている。原因は不明だ。金田湾ではウミグモの大発生によって3年前からほぼ全滅の状態だが、ツメタガイ(アサリ、アオヤギの天敵で、貝を包み込むようにして麻痺させ、捕食する)による被害状況も大きいのではないだろうか。

スミイカ
 最盛期には、1艘で1日200kg近く獲られた。今は平均50kgから60kgで、今シーズンは平均して獲れている。 3年前は10月から12月上旬頃で漁が終わってしまい、結果的には大不漁年となった。その年にはゴマイカ(シリヤケイカ)が多めに混じったが、不漁に対する両者の相互関係は判らない。
 スミイカの子供である新イカは、通常10月頃に出始めるのだが、1ヵ月ほどであっという間に成長し、スミイカの大きさになってゆく。今期は秋口から獲れた新イカが1月頃まで続いて漁獲されたが、後期になればなるほど、どう言う訳か身肉が薄いものとなっていった。この頃の急激な水温の低下が新イカの成長に影響を及ぼしたのかもしれない。
 今期は、最近の東京のすし屋の間での新イカブームによって、新イカがキロ単価1万円以上の値が付くことがあった。7,000円から8,000円の値も付けることが多々あり、漁師を喜ばせている。毎年5月頃には産卵が終わり終漁となるのだが、今年は5月に入っても1艘で2kgから3kgの漁が継続的にあるのだが、アオリイカの不漁のために市場価格が崩れずに、安定相場が続いている。
 築地市場には、近年では各地から通年入荷してくるようになり、1年中スミイカの切れることがないという異常現象が続いている。

ナマコ
 黒ナマコ、青ナマコ。赤ナマコは獲られない。築地でキロ単価200円〜300円しか付かないが、中国バブルのおかげで、外房の干しナマコの加工業者にキロ単価800円ほどで売れ、今期はもうすでに1人単価1,000万円ほどの売り上げになっている。

午前4時25分 本日最初の底引き網漁の魚が入荷する。
底引き網漁
 フッコ、クロダイ、スミイカ、アカメフグ、ショウサイフグ、星ガレイ(0.4kg)、マコガレイ、イシガレイ、タナゴ(腹の中から稚魚が出てきた。腹の中で卵が孵るのだと言う。築地には出荷されない。)が活きたまま生簀に入れられて運ばれてきた。魚種名、数、重さが検量され、伝票に記入されてゆく。元気の良いものは「活けもの」として出荷される。各漁船ごとの漁獲量は平均的に獲れているようだ。
 富津ではイシガレイは単にカレイと呼ばれ、それだけでマコガレイと区別される。

刺し網漁
 3000mから4000mほどの長さを、時期と潮加減によって5m、7m、12mの水深に張る。
 舌ヒラメ、キス、クルマエビ、アカニシガイ、フッコ、クロダイ、スミイカ、アイナメ、マコガレイ、イシガレイ、ツメタガイ(イチゴガイ)。
 ワタリガ二(浜値キロ3,500円、木更津市場では4,000円を付ける)、シロギス、アカエイ(最近は富みに増えている。)。
 竹岡には刺し網の漁師は40〜50軒ほどいる。

刺し網漁のクルマエビ
 クルマエビの刺し網漁は7月から9月頃にやるのだが、通常とは網の目の細かさが違い、クルマエビ専門の刺し網となる。最近は1日に1kgほどにしかならず、全く採算が合わないのでやらなくなった。冬場の水温が低い頃は、深場に移動しているために、刺し網漁の対象とならない。

マコガレイ
 1.3kg級で浜値がキロ5,000円、築地で7,000円から8,000円付ける。しかし、これから常磐ものが本格的に良化し、量も出て来ると値が下がってくるため、それまでの期間を集中的にマコガレイの漁をする。やはり漁獲量は少なくなっている。今日は1.6kgが混じった。

シロギス
 2月から3月は深場に行ってしまうので、刺し網には掛からなくなる。これからしばらくの間、常磐ものの増加によって値が下がってしまうまでのマコガレイを集中的に獲り、その後また産卵のために浅場に上がってきたものを刺し網で集中的に獲ることになる。昔から5月から11月にかけて、年に2回から3回産卵をするようだったが、最近では通年産卵するようになっている。
 シロギスを専門にやる刺し網漁の漁師は5軒あり、夜に網を掛けて朝に網を揚げる時と、朝掛けて朝の内に揚げる場合とがあり、短時間の方が当然鮮度の良いものが獲れる。大小のサイズ別、鮮度別の選別のもとに出荷される。上物は天ぷら種として、またすし屋のネタとしても珍重される。
 底引き網漁、刺し網漁による活け魚の出荷は、水温の上昇と共に難しくなり、5月一杯頃で終わりになる。

カラスミ
 ボラの卵であるカラスミは、富津岬を境にして品質が分かれる。内湾は油臭いものが混じることもあり、品質的にも最高品は望めない。富津から館山に掛けてのものが最高品となる。

富津の漁業再生のために
「漁師、漁協の漁業関連業者が、昔からの既得権利である漁業権にまつわる権利を主張し過ぎだ。漁業権はもう少し公共的なものとして、一般にも開放したほうが良い。」
 これは日本の漁業現場の全てに通じることであるが、老齢化と後継者不足、漁獲量の減少、漁業環境の劣化の重要な解決策の一つとして十分に考慮されなければならない。
 レジームシフト理論の究極的理想である、

平成22年5月26日

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