魚介類の旨さの旬と、旬の変動・移行

平成19年1月

月刊誌 dancyu(ダンチュウ)、2007年4月号 最新「すしネタ」変遷カレンダー作成依頼のために、最近発生している漁獲時期と旬の変動に関する疑問・不明点を再調査することになった。

シンコ・コハダ

静岡県舞阪

浜名湖産のシンコとコハダ
産卵とシンコの初物の入荷


 浜名湖のコハダは4月から5月にかけて産卵を始め、約1ヶ月でシンコのサイズに成長して行く。最近では、この浜名湖産のシンコの初漁ものが、その年の初ものとして異常な高値のもとに築地に入荷することになる。平成18年7月6日、キロ単価80,000円の史上最高値を付けた浜名湖産のシンコは、異常なほどの極小サイズで、握り一貫に8枚から10枚付けのサイズであった。(10年前ほどから、シンコの初もののサイズはこの極小サイズが通常となってしまっている)

  しかし、7月18日には5枚付け、8月1日には1枚付けと瞬く間にサイズを大きく成長させていった。浜名湖産のシンコは、江戸前産・三河湾産・七尾湾産のコハダ達が共有する旨さの特色である、皮目の柔らかさと身肉の膨らみ、しっとりとした甘みと旨みを兼ね備え、最高品として評価されている。

  成長と共に外海に出て行ってしまうものも多いのだが、水温の下がる冬場には、水温が大きく低下しない深場の海底で成長を止めて越冬する。やがて水温の上昇と共に活動を始め、身肉を充実、肥大化させてゆく。卵を持ち始めると、急激に卵を大きく成長させ、産卵の準備を始める。コハダは産卵地への回帰性があるため、外海へ出て行ったものも含め、、再び浜名湖の浅場にある藻場に舞い戻り、産卵することになる。

  平成18年度の浜名湖の水温は春先になっても上昇せず、産卵の遅れと共に、誕生したシンコの成長も大きく遅くれ、浜名湖特産の天然クルマエビ同様に、全体の漁獲量も少なめの不漁年であった。

 遠州灘を含めた太平洋側は、昨年の8月に終った黒潮の大蛇行の影響もあったのか、平年よりも3度ほど低い水温が続き、低温を好むヤリイカの大好漁年となる現象を見せている。地球の温暖化が声高に言われているのだが、全ての海が一律に高温化の影響を受けているのではない。


※昭和の終わり頃から、シンコの初ものの漁獲が1ヶ月もの繰り上げ現象を起こしていった。その早期化の原因はなんだったのだろうか?

 昭和の後半頃より目立っようになってきた、1度から2度に及ぶ海水表面温度の上昇による産卵時期の早期化が、シンコの初漁早期化の最大原因だと一般的には言われてきた。しかし、さらに大きな要因が産地には発生していた。シンコは初ものであればあるほど異常な高値を付けるために、初物競争が熾烈で、シンコを漁獲する魚網の網目サイズを従来のものよりもさらに極小にし、まだ産まれて間もない極小の稚魚のシンコまでも漁獲するようになっていったのだった。

  そのために、8月上旬の残暑の季節感を愛でることを通常としたシンコの世界が、6月下旬の梅雨の終わりから7月上旬の梅雨明けの季節感を食する世界に変化してゆくことになった。産地の漁師達がバブル時代真っ最中の東京の高級すし屋達の狂態に迎合した結果であり、江戸前鮨の職人達がその狂態にさらに便乗した結果でもあった。

  他の店よりも1日でも早く仕入をし、初ものを追いかける競争の結果、従来は1握りで3枚から2枚サイズの大きさでの初荷であったシンコが、5枚から8枚付けの異常に極小なシンコ稚魚の登場となった。産地の漁師達、流通業者達をも呆れさせる法外な遊びの世界へと変化して行った結果だった。この時期、江戸前のすし屋達は休憩時間も返上の、被虐的な緊張感と喜びを共有しながらの仕込みに追われる毎日となっている。

 シンコは産まれた時期によって、1番子・2番子・3番子と呼ばれ、3番子の時期になると漁獲量も多くなり、2枚付けから1枚付けの、シンコ本来の旨さの旬と漁獲の旬の、両方の旬を楽しめる、旬真っ盛りの時期となってゆく。
 しかし、この異常な稚魚サイズでの大量の漁獲は、最近の各産地で生じているコハダの大不漁の大きな原因となっている

※ 浜名湖産(築地市場での通称、舞阪産)の美味で貴重なコハダが、近年築地市場に入荷して来なくなった謎

浜名湖漁師 豊田光雄さん談(小型定置網漁)
 昨年の史上最高値を付けた7月6日の翌日、事前の予定通りに舞阪・浜名湖入りをし、シンコの状況を見学に行った際に知り合った漁師、豊田光雄さんに電話にて疑問点の問い合わせをする。

「キロ単価80,000円の史上最高値を付けるほどのシンコも、約1月後の1枚付けのサイズに成長すると、浜値ではキロ単価300円から500円に大暴落してしまう。さらに成長して9月・10月のコハダが旨くなる旬の時期になっても、この最低価格は全く変わらないため、漁師達はあえてコハダ漁をせず、浜名湖特産としての天然クルマエビ等の高値の付く魚の漁に移って行ってしまう」
「シンコは、7月・8月・9月と急激に成長し、瞬く間にコハダのサイズとなる。シットリとした脂の乗りと旨みが濃くなってゆき、旨さの旬へと入ってゆくのだが、この間、コハダは常に安値を低迷するために、敢えて漁をする漁師がいなくなってしまった。」

※シンコの腹切れ防止と鮮度維持のためのミョウバン使用の疑問と海水濃度調整の謎

 シンコ・コハダの産地では、漁師も仲買・流通業者の誰もがミョウバンを使用していないと言う。
 では、あの死後硬直を起こしたように身が固く締まり、眼が赤く、腹の付け根が茶色に変色し、胆汁の潰れによる苦みを多多発生させ、シンコ・コハダをダメにさせている原因は何なのだ。

「漁獲したコハダを落とし入れてゆく漁船の水槽中の海水塩分濃度は、漁師各人の秘密事項なのだ。まだピチピチと生きているコハダを落とし入れる水槽の海水が薄いと身肉が緩み、腹切れの原因となる。濃すぎると身肉が締まり過ぎ、固くなってしまう。その結果、身肉の過度の締まりにより、胆汁が滲み出て苦みがでることになる。これが、まるでミョウバンを使用したかのような状態になる。たまたま獲られ過ぎて海水が少なかったり、温度が高かったりの手入れが悪い事があると、すぐに目が赤くなり、胆がつぶされ胆汁の苦みが滲み出ることもある。」

※マダイのノッコミ時期の旨さについて

「マダイ・スズキ・クロダイ等が外海から浜名湖に入ってきて汽水域の水を飲むと、俄然魚体が良化し、身肉の旨さが増してくる。浜名湖では、4月から5月にかけてマダイが産卵のために外海から戻ってくる。ノッコミの時期だ。しかし、この時期のマダイはもう卵と白子が成熟し、身肉の旨さが抜けてきてしまっていることが多いため、漁師達も旨さの旬は過ぎてしまっていると見なしている。6月頃に一斉に産卵をするのだが、8月頃になるともう身肉が太り始め、旨くなってきている」

◎平成18年11月から12月にかけて、ガリガリに痩せた感じの舞阪産のシンコが入荷してきた。豊田さんは、そんなことはあり得ないと言う。最近は冷凍技術が進歩しているので、シンコの時期に獲られた、安値で二束三文となってしまったシンコの冷凍解凍ものではないかと言う。
                    
佐賀県有明海、太良町大浦

「共栄丸」漁師兼船主 タダキカツオさん談(投網漁) 
産卵とシンコ

「有明海のコハダ・ナカズミ・コノシロは、水温の下がった冬場、300mにおよぶ水温の変化の無い湾口の深場に移動し、産卵の準備を始めている。コノシロ群は3月頃になると、湾奥の比較的温度が高い浅場に移動し、水温の上がり始める4月から6月にかけて産卵してゆく。卵は2ヶ月から3ヶ月かけて成長してゆき、7月上旬には、握り1貫に5枚付けほどの極小のシンコの初ものとして出荷される。8月中旬頃には水温はさらに上昇し、シンコもさらに急激な成長をしてゆき、握りに1枚付けの大きさに成長している。9月に入ると、あっという間にコハダの大きさにまで成長する。

  コハダは4年生の魚だが、コハダ・ナカズミ・コノシロと、それぞれのサイズの時に、サイズの大きい群れから順番に、産卵をしてゆく。有明海では15年から20年前頃までは4年生のコノシロが大量に生息していたのだが、最近では全く見なくなり、3年生までしか見られなくなった。シンコは晩秋までには立派なコハダに成長し、翌年にはもう産卵し、親魚のコハダとなる」

※シンコの初漁の早期化と極小化の原因

1)春先から初夏にかけての海水温の上昇による産卵の早期化
2)刺し網、投網の網目を細かくし、極小の稚魚の段階での早期漁獲の競争となった。早時期に獲れば獲るほど高値が付くために工夫されたもので、稚魚の段階での決定的な乱獲であり、最近の漁獲量激減の最大原因となっている。

◎3月頃から6月末まで、投網漁は中止となり、刺し網漁に切り替わる。産卵の時期になるとコハダは群れをつくらず、ばらけて生息しているため、投網漁では効率が悪くなるからだ。刺し網漁では、サイズの大小、脂の乗りも様々のものが獲られる。投網漁で獲られるコハダは群れをなしているもので、サイズと脂の乗りが均一化されているものが多い。

※有明海のコハダ漁獲量減少の原因(10年前頃より全ての魚介類の漁獲量が減少している)

1)狂気的高値を付けるシンコの時期での大乱獲
2)年間を通しての1度ほどの水温の上昇。
3) 諫早湾の干拓化(藻場の壊滅)。
4)砂利採集のための、海底の浚渫作業による藻場の壊滅。
5)ダムの増加による影響(水量の理不尽な増減・塩分濃度の急激な変化・山間地からの栄養分流入の阻害等の環境破壊)。
6)大量に増えた海苔生産の海苔網に塗布され、海にも撒かれると言われる薬品の、環境ホルモンとしての悪影響。

※有明海産と天草産との生態系の逆転傾向

 3年前頃から、シンコの初漁時期、身肉の太り方、脂の乗り方が、両産地間で逆転してきているように見える。
1)10年前頃からの海水温の上昇により、この数年、外海に面する天草産の産卵が早くなり、シンコも有明海よりも早く出荷される様になってきた。有明海は内海のために、水温の上昇が遅い。
2)11月頃に始まる海水温の低下と共に、コハダは翌春までほとんど餌を食わず、成長しなくなる。有明海での産卵は、6月・7月頃に遅れることが多くなり、急激な成長と最盛期の脂が乗る前に10月、11月の水温低下の時期を迎えてしまうことになり。結果的に有明産は、痩せた脂の無い状態が長くなり、品質の劣化と見られることになる。

※最近の天草では、晩秋になっても冬型の水温に下がりにくくなってきている。9月から11月にかけても水温が高く、脂の乗りが継続し、美味なコハダの漁期が長くなっている。そして12月、水温の低下と共に脂は急激に落ち、翌3月から4月にかけ、水温の上昇と共に、また脂が乗り始め、抱卵と共に、つかの間の旨さの旬を迎え、卵精巣の肥大化と共に脂を落としてゆき、産卵する。

※天草産コハダの海苔臭の発生。

※ 諫早湾の干拓化、砂利採集のための浚渫による、浅場にあるコハダの生息地である藻場の破壊により、コハダの生息地が海苔ヒビ近辺に多くなってきている。海苔も餌として食しているのかもしれない。
※ 刺し網漁・投網漁は海苔ヒビに悪影響を与えないので、近辺でのコハダ漁が公認されているが、海苔網に使用される薬品の悪影響が言われている。
◎シャコの小型化と漁獲量の激減〜諫早干拓・ダム建設・浚渫による海底の穴ぼこ化等の環境破壊  
 が原因と思われている。
◎有明海の芝海老〜一昨年は大豊作であったが、昨年は一転して大不漁となった。原因不明。
◎コハダは産卵場への回帰性があり、有明海のコハダが水温の高い天草方面に移動し産卵することはない。

東京湾の魚介類
千葉県鋸南勝山  八佐丸水産  渡辺安喜男さん談

魚介類の旬の変動と異常の原因
※海水温の上昇と潮流の変化

1)エルニーニョ現象による海水高温化の影響。
2)最近特に多くなってきている東京湾の潮流の変化。(海底に沈められたテトラポットさえもが原因の1つとなっていると言われる)
3)温暖化による影響と冷水塊発生による水温の変化。
4)全国的に常態化しつつある黒潮の不安定化が生態系に及ぼす影響

※水温の変化が、季節の変化に同行していない。
1)平成18年12月の勝山沖は、例年の海面平均水温10度が、13度となる異常さを見せ、本来の冬型の海水温になっていない。

サヨリ
 10月中旬、2艘引き網漁によるサヨリが少し獲られたのだが、量がまとまらず、11月・12月は例年にない操業中止のまま終わってしまった。
マアジ(クロアジ)
 例年、3月から4月に産卵し、5月から7月にかけて魚体が良化してゆくのだが、平成18年は5月から6月に産卵、産卵後の魚体が戻らずに、8月には魚体が細くなり、脂落ちの現象を見せていた。それが、9月に入ってから細い魚体のまま脂の乗りを見せていた。2ヶ月から3ヶ月のずれの現象を興していた。海水温は平均1℃から2℃高くなっている。
  
千葉県船橋  カネハチ水産 社長談
※平成18年12月の海水温20度の異常

1)平成18年は台風の影響が無かったのだが、秋期の大雨による水門開放は、大量の真水の流入による海水濃度希薄化をもたらし、その影響でアサリ・アオヤギが全滅の状態となった。
2)海苔も5年前頃から海水温の上昇により、連続して年内の収穫が全滅に近い状態となっている。
3)隅田川、荒川等東京湾に流入する大小16本の河川が東京湾に大きな恵みをもたらして来たのだが、上流での降雪なしの状態、冬雨による冷たい水の流入も無かったことが、水温の低下をもたらさなかった原因の一つとなっている。

子持ちのマコガレイ
 例年、内湾では年末に子持ちのマコガレイが最盛期になるのだが、12月の初めに産卵が始まり、抱卵のマコガレイ漁は12月中旬には終わってしまった。

千葉県船橋  海苔漁師 滝口喜一さん談
海苔
 今期引退を決意していたが、マスコミの取材に応じるために12月25日に1回だけ海苔の採集と天日干しをすることになったらしい。海苔の生育に最適の水温12度から13度に対して、年内は20度を越す海水温のために海苔が腐ってしまい、漁協全員が網を上げることになり、滝口喜一も生産中止となった。1月15日頃に再度挑戦するとのことだが、本当に水温は下がるのだろうか?
江戸前のコハダ
 3月から5月にかけて抱卵し、6月から7月に産卵すると言われる。しかし3枚付けから2枚付けの大きさのシンコは全く築地に入荷してこない。10月から11月頃に1枚付けたっぷりのサイズが行徳・ディズニーランド近辺で獲られるが、重油汚染と泥臭さのために使用できないものが多い。

千葉県大貫  大川丸 社長談
スミイカ

 平成18年10月20日、今年のスミイカは量も少ないが身肉も薄く痩せ、品質的にももう一つ決め手に欠けるものがある。年末にかけて大不漁年となり、マイカに似たシリヤケイカが混じり、甲イカとして出荷してきている。水温の低下の遅れもあるが、約1ヶ月ほどのずれが生じている。春先に木更津から観音崎の海域にかけて、かなり大量の魚の死骸が浮き上がったが原因は不明だった。
サヨリ
 サヨリ漁は、2艘引きの網漁で、他の魚が不漁の時に間隙を縫ってやる事が多いのだが、今年はあまりにも魚影が薄いために、年内の漁を中止にしてしまっている。
サルエビ
 マダイの餌となるのだが、10年程前の3分の1程しか獲れず、マダイも獲られなくなっている。
穴子
 激減。少量しか獲れず、輸送代にもならないので、築地に出荷せずに地産地消の状態になっている。
海苔
 12月末水温20度。生産量は3分の1。1,000万円の生産高が350万円ほどに激減している。
◎鹿島のマダコ
 一昨年は大不漁も、平成18年は好漁となった。

千葉県富津


ミル貝
◎平成18年、2月中旬から始まった抱卵は、春から夏、晩秋から12月に入っても抱卵のまま卵を落とせず、そのままさらに抱卵続行。19年2月末、新規抱卵の時期と重なり、産卵の有無が不明瞭のまま新たな抱卵の時期に入っている。

  この異常な状況は、漁師も漁協も水産研究所も全く認識していなかった。4年前、伊良湖のミル貝が8月頃まで抱卵の状態のまま終漁期に入っていったのだが、4年後の平成18年、4年生となるミル貝は不漁となっている。
4年後の富津産ミル貝の漁獲が心配となる。

アカガイ
 昨年は例年に比べて水温が高く、夏場に産卵を終えたほとんどの産地の赤貝が、身質を正常に戻し良化したのは12月頃になっていたように見える。この現象は韓国・中国産の赤貝にも共通している。平成19年1月に入っても、ユリアゲ・大分県の赤貝は卵を持っているものが混じっている。

宮城県ユリアゲ
 漁期9月1日から6月末まで。禁漁期は7月から8月の2ヶ月だけで、他の月は全て操業しているのだが、漁獲量の激減と中型・大型サイズの良品の激減と著しい品質の劣化を見せ、江戸前の赤貝絶滅後の最高品質ものと賞賛されたかつての栄光は失せてしまっている。
 10年ほど前から冬場の旬真っ盛りの時期に抱卵している貝が混じるなどの異変が始まっていた。乱獲された資源の補充のために漁獲制限や韓国産の稚貝の放流等をしたのだが、結果的には漁獲量の激減と色の美しさも含めた身質の劣化現象を起こしてしまっている。

大分県中津・長津
 漁期は10月10日から4月20日まで。例年1日に20キログラム程度の漁だったが、平成18年は大豊漁で、最大時600キログラム、年明けで100キログラムほどになっている。身質が少し固いが、色良く香りもある。

漁期は特に無く、他の魚介類の漁の狭間に行なわれる産地
香川県観音寺

 漁期は無く、産卵後の身肉が戻り始めた頃、特に11月頃からが多い。1日50キログラム程度にしかならない。

長崎県小浜
 赤エビ・ブドウエビの底引き網漁をしている漁師達が、エビ漁の間隙を縫って、初夏から夏にかけて産卵後の身肉が戻り始めた赤貝をケタ漁で獲っている。品質が悪いとすぐに漁を中止してしまうため、出荷のない年もある。

※他の漁のなかで混在して漁獲される産地
石川県七尾石崎

 漁期は7月から9月までで、赤貝の産卵期から産卵後の時期に当たり、品質的に劣ったものが多い。トリ貝のケタ漁の中に混じるため、特大サイズが主体になる。

山口県宇部、兵庫県赤穂

 入荷はまれに、たまたま獲られた時に出荷される。

アワビ
クロアワビ・マダカアワビ・メガイアワビ・エゾアワビ・ジョウバンアワビ

三陸(宮城県・岩手県)  漁期  11月〜 1月   産卵 9 月〜10月
常磐(茨城県・福島県)  漁期  6月〜 9月   産卵 9 月〜10月 
千葉県(外房)      漁期  5月〜 9月   産卵 9 月〜10月
神奈川県         漁期  10月〜12月   産卵10月
静岡県          漁期  12月だけ禁漁   産卵11月〜12月
山陰(島根県・鳥取県京都)漁期  11月〜12月禁漁 産卵10月〜11月
長崎県(五島列島)    漁期  12月禁漁     産卵11月〜12月

産卵期の遅れの原因
 全国的に上記産卵期は1ヶ月ほど遅れてきている。水温が20℃を切る頃に産卵が誘発されると言われるが、水温上昇のために20度以下になるのが遅くなっている。

ハマグリ
茨城県鹿島・大洗・波崎産

 産卵は7月から9月。一年中禁漁無しに、漁獲制限のもとに漁獲される。
 旬は10月から3月。産卵は1ヶ月ほど早くなっている。海水温が16度以上になると産卵が誘発されるのだが、海水温の上昇が早くなっている。

サヨリ
東京湾内湾(船橋・富津・竹岡・大貫)、
   三浦半島(松輪・鴨居・走水・佐島)、常磐、三陸(七ヶ浜・石巻・牡鹿)

 東京湾、相模湾、仙台湾の生態はほぼ共通で、産卵は4月下旬〜5月下旬。平成18年は水温が低く、産卵が1ヶ月ほど遅くなったようだ。この数年は1ヶ月から2ヶ月早まっている。

 平成17年は、11月頃から東京湾内湾の「かんぬき」サイズのものが比較的量がまとまって獲られていた。年内は常磐産の良品が少なく、三陸の七ヶ浜・牡鹿産の漁獲が多かった。18年1月から東京湾内湾の漁が多くなり、富津・竹岡・横須賀東部漁協の鴨居・走水、松輪産が多かった。

 平成18年10月、サヨリ漁が少し始まったのだが、量がまとまらず、中止。12月、鉛筆サイズに近いサイズで、漁獲も少ない。今期は水温が高く、内湾・相模湾は不漁の様相を見せ、効率が悪く、漁を中止してしまっている。
11月より年明けにかけ、石巻・牡鹿の品質の高い「かんぬき」サイズのものが好調に入荷している。

スミイカ
鹿児島県出水

 春先の水温の上昇が早かったため、産卵が早かった。
 スミイカの子である新イカの初漁は例年より2年続きで1ヶ月早く、7月中旬に獲られている。量的にも豊漁年で、握りすしに2貫取りする新イカサイズが、例年では12月には獲られなくなるのだが、2月に入ってもまだ獲られ、3月上旬に至って遂に終わりとなった。

新潟県出雲崎
 新イカサイズが最後に入荷してくる産地だが、新潟地震の影響で漁に出られず、平成18年1月から5月にかけての入荷は全く無かった。

各地の天然車海老(クルマエビ)
 天然ものの産卵期は産地によっても差異があるのだが、6月から9月頃にかけてで、この時期の抱卵エビは高値で取引されると言う。
 クルマエビは生態系が特殊で、産卵直後のメスを除いては、旨さに大きな変化は無いようだが、晩秋に水温が下がり始め、身肉がたっぷりと太る頃から、水温が下がりきり、表面海水温度の変化に影響されない深場に移動した頃に甘みが増す。しかし冬場の水温が下がりきる時期には、深場に潜り行動しなくなるために漁獲されなくなる。だからクルマエビは産卵のために浅場に生息場所を移し、比較的量がまとまって取れる夏場の漁獲の旬も、冬場の旨さの旬と共に愉しむことになる。

静岡県浜名湖産
 平成17年は赤潮の発生のために、湖の奥方のアサリ・養殖カキが全滅した。19年は最良のカキが獲られているのだが、ノロウイルスの発生流行のために、やられてしまっている。

 昔は流し網漁が4月の第2週目に始まり、天然クルマエビ漁の始まりとなったのだが、4、5年前に中止となった。今では5月の中旬頃から小型定置網漁が始まり、11月末頃まで行なわれる。平成18年は12月末、さらには1月に入ってもまだ少し獲れ、結果的に1ヶ月余り長く漁獲が続いている。冬型の水温に下がりきらないのが原因と思われる。漁の始まりが遅くなったのは漁法の変化によるものであった。
 2年生と言われている春頃に産卵したものが、8月中旬には10グラムから15グラムのサイマキに、翌年の7月頃には30グラムほどに成長、秋になると外海に出で行ってしまう。
 浜名湖産天然クルマエビの最大の問題点は、海水温の上昇による漁獲期間の変化よりも、最近顕著となっている漁獲量の激減にある。

※アオリイカ・スズキ・タコが多く獲れ始めてきている原因
1)浜名湖の塩分濃度が濃くなってきている。
2)浜名湖内の外洋寄り水域の海水温上昇により高水温を好む魚介類が獲られるようになった等推測されている。

※各地の養殖車海老 クルマエビ

 絶滅に近い状態の天然クルマエビに対し、市場に流通しているクルマエビのほとんど全てが養殖ものとなっている。各地の養殖クルマエビは、中秋の10月頃から春先の2月末頃までを主に出荷する。クルマエビは水温の低下と共に甘みが増し、この時期が正月の最需要期も含むメイン出荷期間となる。

千葉県外川
島長水産談

「外房の魚介類の旨さと漁獲の旬が2ヶ月ほどずれてきている。冬が旬の魚は始まりが遅く、終わりが早くなってきている。水温は相対的には1℃から2℃高くなってきている。
 親潮と黒潮の流れが逆転する逆潮現象が生じ、平成18年2月にはイシガレイが大豊漁となった。その逆潮の影響は12月まで続いた」

ヒラメ
「平成18年12月。水温の低下と共に身質の締まり、厚み、太り、脂の乗り具合、良化する。平成19年1月、旨さの旬、最高の状態となる。このまま2月末から3月上旬、抱卵の始まりの時期まで継続するだろう。12月、1.5キログラムから2キログラムのヒラメがキロ単価4,000円。1月にはキロ単価2,500円の最安値を付けている」どうなっているのか。当店の築地での仕入れ値はキロ単価10,000円前後。落差が大きすぎる。
マダイ
 寒ダイが旨い。3月頃まで。卵が肥大化し、婚姻色による華やかで美しい朱色がでる頃には、旨さの旬は終わっている。
ホウボウ
 1月に入り、丸々と太り、脂もたっぷりと乗り始める。3月まで。
スズキ
 6月、7月、8月。10月から11月産卵。
マコガレイ
 12月抱卵、1月産卵。旨さの旬、6月・7月・8月。10月には脂が落ちてゆく。

海苔
船橋漁協 平成18年度

 6年前頃から常態化している海水温の上昇による被害は今年も全く同じパターンで発生している。
 12月の水温が、20度もあったのだと言う。海苔の生産に必要な水温は13から14度となる。この異常な高水温は他の様々の魚達にも影響を及ぼしている。
  船橋漁協の海域の海苔は、下がり切らない水温のために、根腐れ病が発生し、全ての海苔網を総上げしてしまったのだと言う。今期、廃業宣言した滝口喜一も、12月25日にTVの取材に応じて1回だけ採集・天日乾燥をする予定だったのだが、中止し、1月15日頃に再挑戦することになった。
 他の漁師達も1月から冷凍網を入れ3月頃まで、一斉に生産開始することになる。

新富津漁協
 3年前頃までは11月上旬に入札が始まったのだが、最近は11月中旬に移行している。
 11月14日初入札。例年の80から90パーセントの漁獲量
 千葉県の場合、漁師各人がそれぞれ勝手に栽培を始めるために、操業の始まり、終業時期の把握が難しい。九州地方では漁連の指導のもとに一斉に始まり、終わる。

木更津漁協(金田湾)
 12月の生産量は例年の10パーセントくらい。最盛期でも半分以下に落ちている。
有明海
 筑後川・早津江川と2本の川の河口を漁場とする最高品質の海苔を産する南川副を代表とする有明海産の海苔は、平成18年 11月15日初加工、21日初入札があった。この海苔は漁連が天然のスサビ海苔を採集した網を使用するもので、12月商戦に間に合わせるための貴重な新海苔となる。
 11月の水温は高かったのだが、12月に入って下がり、12月10日の雨は、豊富な栄養分を川から運びこむ恵み雨となり、24日・25日の入札の海苔は、例年以上の品質の良さで、枚数も良い数量に上がっている。昨年度は品質・数量共に不良な年であった。上物は比較的良かったのだが、一般業務用の中クラスものの出来が悪かった。
仙台漁連
 20年前から松島湾で始まった海苔栽培は海水温が低いという環境条件の良さもあり、毎年10パーセントずつ漁獲量が増えている。
瀬戸内海
 冷凍網産が豊富で、量・品質共に良く、有害プランクトンが発生する5月上旬まで操業される。

平成19年3月11日

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