静岡県舞阪漁協
今期、史上最高値を付けたシンコを追って
平成18年7月8日(土)、9日(日)

シンコ(新子)とは
江戸前鮨屋達の悩ましくも熱く熱い思い入れ
 江戸前すしの元祖と言われるコハダは、出世魚としてシンコ・コハダ・ナカズミ・コノシロと4回も名前を替えて成長して行く。江戸前すしの世界では今でも最も大切な魚として扱われている。通常は1尾で2貫に付けるくらいの大きさのコハダを美味とし、ナカズミ・コノシロの大きさに成長したものは高級店では使用されないことになる。皮目が硬くなり、見た目の美しさも悪くなり、旨さも大味になるために敬遠されるのだ。シンコはコハダの幼魚で、生後3ヶ月から4ヶ月ほどの大きさのものを言う。晩秋から冬場にかけての“旨さの旬”としての旨さとは全く一線を画した世界を持っている。江戸っ子特有の初ものに対する好奇心と憬れは、季節の先取りである“走りの旬”としてのシンコを異常な程、殊更に愛でることになる。まだ数キロにしか満たない極少の漁獲量の初ものは、高級すし店と、熟達の腕を持つ一流の職人達と、お客さん達との見栄と意地と誇りの心意気を賭けての争奪戦となり、異常な相場の狂騰となる。江戸時代の、初鰹の世界で語られた“女房を質に入れても…”と言うほどの江戸っ子の熱い思い入れが、このシンコの世界には今でもまだしっかりと伝えられて来ているのだ。

残暑の季節感から梅雨明けの季節感へ
10年ほど前までは、8月の上旬、残暑の頃に出回り始め、3尾で一握りの「三枚付け」から「一枚付け」の大きさまでを言っていたのだが、最近では7尾で一握りとなる「七枚付け」から始まるようになった。季節も梅雨の終わり頃、6月の下旬から7月の初め頃へと移ってきている。「七枚から五枚付け」の初ものの頃には、1キロで200尾から50尾の数となる。1尾の仕込みは、コハダとほぼ同等の時間と、紙のような薄さのために、さらなる細心の集中力を要求され、仕事の量も半端でなく過剰なものとなる。その2週間から3週間ほどの間は、12月の最盛期を迎えた津軽海峡大間のホンマグロの時期と共に、最も熱狂的で緊張感を含む、年間最大イベントの時期となる。

今期、静岡県舞阪漁協出荷のシンコは史上最高値の驚くべきセリ値を付けた。
 築地中央卸売市場では、7月3日(月)、k単価6万円。休市開けの6日(木)には45,000円のセリ値を付ける。同じく6日、浜松中央卸売市場では、浜名湖産のわずか2.2キロしかない極く少量のシンコに産地仲買人2社・買参人2社の強気な買いが殺到、産地での入札価格である浜値がキロ80,000円という史上最高のセリ値をつけることになった。
 翌7日(金)、天草産のシンコ30キロ入荷、キロ5,000円を付ける。この30キロの入荷のために、80,000円の史上最高値の浜値を築地では維持できず、前日の舞阪産は65,000円台で捌かれて行った。
 2004年初水揚6月4日。2005年初水揚6月10日。少しはまとまった漁獲量にならないと築地には出荷出来ないとのことで、産地の初水揚と築地市場での初入荷とでは10日以上の差が出ることが多いと言い、極少の量のシンコは地元で消費されるらしい。

平成18年、舞阪、築地市場での初物シンコの値段

今期、舞阪漁協の中一水産扱いの出荷状況
6月28日、80グラム。29日、10グラム。30日、10グラム。7月1日、520グラム。6日、22グラム。7日、120グラム。
 量が少ない時には浜松中央卸売市場へ出荷。まとまると築地中央卸売市場へ出荷する。7月20日前後、4日に1回ほどの割合で築地に出荷。7月22日、三河湾大浜港水揚始まる。

コハダの値段とシンコの値段の異常さ
 コハダは、江戸時代からの江戸前すしを代表する魚であるが故に、東京のすし屋が最も大切にしている魚だ。しかし、巻き網漁等で大量に漁獲される魚であるために、決して高価な値を付けられることは無い。築地市場での通常のセリ値は、キロ単価1,000円から2,000円位までの値となる。これは大衆魚の値段であり、すしネタの中でも安価な部類に入る。そしてキロ3,000円を付けると町中の一般のすし屋はもう使用しなくなる。
 3,000円でも大変な高値感があるからなのだ。しかるに、三河湾の三谷・静岡県の舞阪から入荷するシンコの初ものは、安い年でキロ35,000円。40,000円から50,000円前後が通常の平均となるのだが、最高値としては3年前に舞阪産がキロ60,000円を付けたことがあった。この相場は江戸前すしの多種多様な魚の中で、シンコの常軌を逸した異常さを伝える相場として語り草となっているほどであった。通常値の30倍から60倍の値となるからだ。その舞阪産が今期80,000円を付けたのだった。ちなみに高級店では決して使用されないコノシロの相場は、キロ単価100円から200円ほどの超激安値で、もっぱら大衆店や「正月の粟漬けのコハダ」として使用されることになる。

江戸前・舞阪・三谷・石崎産のシンコと天草・有明産シンコとの比較
初もの出荷産地の変化の原因
 平成5年頃までのシンコの初ものは、三河湾にある愛知県三谷・蒲郡産が主体であった。しかし当時すでに最悪の状態に近いほどに環境破壊と汚染に晒されていた三河湾の荒廃はさらに深刻なものとなってきている。他の魚介類と共に、コハダとシンコも壊滅的なほどの漁獲量の激減に晒され、たまに獲られるものも、江戸前のコハダ・シンコにも見られるような、油汚染による重油臭をまとうようになってしまった。そのため5年前頃からは、三谷・蒲郡産に代わって、舞阪産のシンコが築地への初もの出荷の栄誉を担うようになってきた。そして舞阪産のシンコの初漁は、かっての8月の上旬、残暑の季節感の頃から、遂に6月の下旬、梅雨明け前から梅雨明けの季節感にまでさかのぼって来てしまっている。

最近の初もの出荷の異常な早期化と極小化
 出荷の異常な早期化の最大の原因は、シンコの初ものが法外な狂騰値を付けるために、他の産地よりも1日でも早く獲るための競争の結果であった。早期の漁獲のために、 漁師達が人為的に網目を細かくしたのだった。その結果、生まれて間もない稚魚が網で獲られるようになった。かってはコハダの幼魚であり、一貫に三枚付けの大きさから始まったシンコのサイズが、七枚から八枚付けという稚魚を握る結果となってしまった。

今期初入荷の舞阪産と有明産との旨さと値段の関係
 しかし、たった2.2キロの漁獲量しかなかったとは言え、キロ単価80,000円を付けた舞阪産と、同日入荷の30キロもの量でキロ単価25,000円を付けた天草産のシンコとの間にいかなる状況、いかなる旨さの差異があるものなのだろうか?
 東京湾内湾の江戸前のコハダと愛知県三河湾の三谷・蒲郡、静岡県舞阪と石川県七尾湾石崎のシンコ・コハダには共通項がある。栄養豊富な海域に生息するためなのだろうか、ふっくらと丸みを帯びた身肉には甘みがあり、成長するに従い上質な旨みと脂の乗りを見せ始め、皮目も柔らかい。佐賀県有明海産と熊本県天草産の、まだ大量に漁獲されるシンコ・コハダは、江戸前・三河湾・浜名湖・七尾湾産に比較すると明らかに皮目が少し硬めで、身肉の太りと甘み・脂の乗りによる柔らかさに欠けるところがある。これはコハダのサイズになるとさらに目立ったものになるのだが、シンコの場合には最小でも一握りで三枚から二枚付け以上の大きさに成長してこないとその違いが明白にはなって来ない。いわんや五枚から七枚の大きさでは、それぞれの1尾1尾が紙のように薄く小さいために、両者の差異は、通常に言われるほどには認められない。だから7月7日入荷のキロ単価80,000円の舞阪産と25,000円の天草産は、両者共に七枚から八枚付けという極少のサイズの初ものであったために、両者の旨さの差異はほとんど認められなかったはずだ。
 むしろ、三河産と舞阪産は、皮目と身質の柔らかさゆえに、完璧な鮮度での輸送の難しさを補うために、あるいは極少の量を産地で留め置き、量をまとめて出荷するために、保存効果のあるミョウバンを使用すると言う大きな誤りと裏切り行為をする結果となり、それが常態となってきている。ミョウバンの使用は、身肉の渋み・苦みの発生という旨さに対する最大の裏切り行為となる。しかもこの江戸前鮨の世界で最も特異で高価なシンコに施される、決して許されない裏切り行為となる。だから江戸前鮨屋は強く声高に非難して行かなくてはならないのだが、現状までではほとんどその声を聴くことは無い。しかるに天草・有明産は漁獲量の大量さのゆえに、いかに迅速に、いかに鮮度良く築地市場に出荷するかと言う命題の実現のために、空輸便の使用までをも日常的な流通手段として取り入れてきている。身肉が少しやせ気味で、皮目も少し硬めである欠点を除けば、ミョウバン使用なしの素晴らしさを維持していることになる。
 江戸前の、晩秋のコハダと時季外れに獲れるシンコは、もうすでに使用するのがためらわれるような状況となっている三河湾産のコハダ・シンコと共に、油臭さと妙なヘドロ臭のするものが混入するようになってしまった。たとえ一部とは言え、その混入は他の全てのコハダ・シンコが汚染されている危険性があるがゆえに、仕入を手控えざるを得ないような状態となってしまった。
かくして産地によって一長一短のあるシンコの旨さと、この膨大なセリ値の差異の中で、何時・何処の・どのサイズのシンコを使用するのがより良いのか、新たに重要な選択の可否の余地が発生してきている。

ミョウバン使用産地
愛知県三谷・蒲郡産は10年以上前から使用され始めている。最近では瀬戸内のコハダのほぼ全てもミョウバン使用に晒されている。使用量過多のために、身肉がピンと硬直してしまっている。

最近の異常な高騰の一原因
 最近、江戸前すし(フランス料理、イタリア料理も含めて)の世界で、一部の高級品・際ものが異常な値を付けることが多くなっている。シンコのキロ単価80,000円、特大マダカアワビのキロ単価24,000年、ホシガレイのキロ単価28,000年、ホンマグロのキロ単価に200,000円異常だ。この原因は、漁獲量と高品質品の激減にもよるのだが、名店と言われる老舗や新規に開店した若手の職人達が店の宣伝のために買いあさっているのが大きな原因になっているようだ。これが是か非か、やがては是正されてゆくのであろうが、とにかくこの傾向がお客さんの不利益となってしまうことは慎まなければいけない。

舞阪漁協行
 だから、今期の浜値キロ80,000円は異常を通り越して関係者全員が、あきれ返ってしまっている相場なのだった。半月前に計画した今回の舞阪漁協行は、長雨と冷夏に近いような気候の中で、初漁がかなり遅れるのではないかとの予測ではあったのだが、たまさか、このような異常な状況の中での訪問となった。「濱長水産」、「東水」からの紹介で舞阪漁協産地仲買「中一水産」の中西正宏社長を訪ねる。

舞阪漁協行の目的

1)では今期、何故こんな相場になってしまったのだろうか?
2)外海の舞阪で何故コハダの稚魚のシンコが獲られるのか?
3)どんな漁法で、どんな流通経路で入荷して来るのだろうか?
4)5、6年前頃までは8月の始まり頃が初入荷であったのに、6月の終わり頃から7月の初めに初入荷が繰り上がったのはなぜか?
6)腹切れを防ぎ、鮮度を維持させるために、シンコにミョウバンを使用するのは誰か?漁師か?仲買人か?ミョウバンの使用による腹端の赤い染と苦みの発生という言語道断、不当な結果を承知しているのだろうか?

7月7日(金)23時50分
 東京駅南口発・静岡県浜松駅行き深夜高速バスは、翌朝6時25分、浜松駅に無事到着。さらにタクシーに乗り継ぎ、浜名湖畔で花博の会場となった村櫛町在の静岡県浜名漁協村櫛支所に6時50分着。
 村櫛支所の入札は8時開始という事であった。築地へシンコを出荷している舞阪の産地仲買業者である中一水産の中西正宏社長はすでに来所していた。昨日、浜松中央卸売市場で付けた浜値、キロ単価80,000円という史上最高値のシンコの世界の異常さを挨拶がわりに、気持ち良く出迎えて下さった。さっそく今年のシンコの状況を説明して頂く。「今年のシンコの極端な魚影の薄さは、例年よりも4度から低い水温によって、産卵と成長が大幅に遅れているのではないかと思われる。この水温は、現在最盛期であるはずのサイマキエビの漁獲にも大きな影響を及ぼしている。そしてこの数年来見られる鵜の異常発生による湖中の小魚の大量捕食も不漁に拍車をかけているように見える。残念ながら沖縄地方に来ている台風の影響と、土曜・日曜日のゆえに、今日明日の両日のシンコ漁はないだろう」と言う話であった。
「コハダの産卵場所である藻場の豊富な漁場を持ち、毎年一番早く出荷してくる白洲支所は本日休業のため、来所しても無駄足に終わるだろう」ということで、この村櫛支所の見学の後、雄踏支所にも案内してもらい、入札の現場を見学させて頂くことになった。白洲・村櫛・雄踏・もう一つの鷲津が浜名湖のシンコの漁獲と出荷産地になっていると言う。鷲津は明日、「海老仙」の加茂専務に案内してもらう事になった。白洲・村櫛・雄踏・鷲津支所は全て入札で値が決められ、浜松中央卸売市場のようなセリによる取引ではなく、今回のキロ80,000円というセリによる暴騰の悪弊はない。

白洲支所
 湖西にある村櫛、雄踏に挟まれた湖上を、さら北奥に入り込むと白洲がある。白洲の漁場は、水深が浅く、藻場の多い海域で、天敵となるスズキなどの大きな魚がいないために、シンコはその岸辺近くに産卵する。初漁はこの岸辺近くに網を仕掛けるのだが、徐々に沖合いに移動して漁を行なってゆく。しかし、純粋にシンコだけを狙う漁師は少ない。午前1時頃に出漁、3時から4時頃に網を上げ、5時の検量に間に合うように帰港する。地元の初漁はお盆の7月13日頃を目安としてきたが、この数年は早くなって来ている。浜名湖のシンコ漁は毎年白洲産が一番早く、初ものとなる。漁が少ないこともあるのだが、全て浜松中央卸売市場に出荷される。
浜名湖での漁法は、「刺し網漁」と小型定置網である袋網漁(地元で呼ばれる「角立て網漁」)が主体となる。12月頃に外海から上ってくる鰻の稚魚を獲る「めっこ漁」と秋の鰻、6月・7月のシンコは、この角立て網によって漁獲される。

村櫛・雄踏支所にて
 6時50分、村越支所では角立て網によって獲られた魚達が、もう選別検量されていた。
 魚の種類は多い。サイマキエビ・小アジ・小ダツ・白キス・コノシロ・クロダイ・大小のマゴチ・小マコガレイ・セイゴ・アイナメ・ヒラメ・カイズ・ドウマン・各種カニ。

「ドウマン」…深場に生息する浜名湖特産のカニで、6月頃から獲れ始め、600グラムから800グラムに成長し、9月から10月頃が最盛期となる。茹でると真っ赤に美しく発色し、甘みが極めて強く、身質もしっかりとして旨い。漁獲量の激減のために、近年は孵化・放流もされている。30年も昔に食した時、その甘みに感動した覚えがある。生命力が強く、ハサミは割り箸を折るほどの力を持っているが、簡単に全部のハサミを落とすという擬態をするため、瞬時に活け〆し、糸でハサミを括ってから茹でることになる。

 生簀の篭から出され、検量された魚介類でまだ生きているものは直ぐに又生簀に戻される。
 例年の今ごろは23度ほどある水温が、今年はまだ18度しかないという。そのための異変は、シンコの成長の遅さと出遅れ、サイマキエビの成長の悪さと漁獲量の激減に表れていると言う。
 4本のポールを立てることによって張られる小型定置網の角立て網は、前日の朝に網を仕掛け、翌日の4時頃に上げられる。

湖内の変化と漁獲量の減少
浜名湖は塩水の流入と、川水の流入による汽水域であり、湖奥の方では淡水域となる。だから淡水魚と海水魚の両方が漁獲されることになる。
1)しかし、近年、河上のダムの完成によって生じた川水流入の調整と減少によって、湖内の塩分濃度が濃くなり、タコ・アオリイカが獲れるようになった。
2)養鰻場による井戸水の過度な汲み上げ、
3)船道の開通による海水流入の増加、
4)ミカン畑からの農薬の流入、
5)生活排水の流入の増加、
6)鵜の大量発生。(湖畔には鵜が群れるように飛翔している。)これらの原因による生態系に対する影響が、漁獲量の大幅な減少をもたらしているように思われる。

鷲津支所にて
7月9日、7時30分。「海老仙」の加茂専務の車で鷲津支所に向かう。
 昨日の村櫛、雄踏支所に比べて、はるかに漁獲量が多く、活気が漲っていた。魚種は相変わらず多く、淡水、汽水の魚が入り混じるのだと言う。
サイマキ(5月〜7月が最盛期で、この時期築地にも大量に出荷されるが、今年は大不漁年で、サイズも小さい。8月・9月に入るとほとんど全て産地消費となる。成長と共に外海に出てゆき、三河湾・伊良湖方面に回遊してゆく。)セイゴ・スズキ (3.5キロの最高品、1尾5,000円で落札)・コノシロ・マゴチ・ワニ(マゴチに似るが、白い縦縞あり)・ボラ・イシガレイ・マコガレイ・ヒラメ・アイゴ・小アジ・各種カニ
サヨリ・アナゴ(身肉が太った良品)・天然ウナギ・マダコ・ヒイカ・サッパ・ギンポ(浜値キロ単価4500円 今期東京の天婦羅屋用に、かなりの量が出荷されたと言う。初夏の江戸前天婦羅にはなくてはならない魚なのだ)・クロダイ・メイタガレイ・ホウボウ・リマ(ネコマタ、カワハギの仲間)
◎ クロダイ…5、6月頃が産卵期で、9月頃になると身肉が飴色になり美味。
◎ 雨が降った後はエビ・カニ・タコが活発に動き、漁獲される。
◎ 浜名湖周辺の養鰻場は過度の水の悪化と病気の発生、中国産の輸入物との価格競争に負け、鰻料理屋に転身したものが多い。小規模な家内養殖場だけが生き残っている。
◎ たきや漁…湖面に灯りを照らし、船上から魚を銛で突いたり、網でエビ・カレイ・カニ等を獲る。今では観光用として行われる。
◎ 2月〜5月、旬を迎えるアサリ漁が最盛期となる。
◎ 秋の浜名湖では浜名湖の代名詞と言っても過言でないハゼと天然の下り鰻の最盛期となる。10月末になると青海苔と牡蠣の水揚が始まる。11月から鰻のシラスを獲る「めっこ漁」が始まり、1月15日に禁漁となる。
◎ 昔はハマグリ・ミルガイ・アカガイが獲られたが湖内の埋め立てによって全滅した。シラウオはまだ獲られている。

鷲津の漁師・豊田光雄さん談
「シンコはすべて角立て網漁によって獲られる。1トンから1トン半の小船での漁で、鯨尺で5寸の網を13フシ、6年前頃からより一層小さいシンコを獲るために、最後部にある袋網の網目を8分(約3B)から6分5厘(約2.3B)以上、袋網も12.6mm以上と小さくした。そのために、漁期の始まりが早くなり、シンコのサイズも小さくなった。シンコを網から揚げる時、まだ活きた状態のままで海水よりも濃度の高い塩水の中に落としてゆく。濃度が低いと白っぽくなってしまうからだ。その際にミョウバンを使用することはあり得ない。シンコの初物は白洲支所が最初となる。白洲にはシンコの産卵の藻場があるためで、最小のものが最初に獲れるからだ。白洲では全て天竜川沿いにある浜松中央卸売市場に出荷される。産地仲買人・買参人によるセリの後、そこから仲買人・買参人、さらにはセリ権を持たない他の出荷者達によって築地に出荷される。」

誰がミョウバンを使用しているのだろうか?
「ミョウバンの使用は漁師・産地仲買の出荷処理の時にはあり得ない」と言う。では、誰が、いつどこで使用するのだろうか。今期の最重要探求課題となった。中一水産の中西社長の話では、「産地の中卸(地元に店舗を持っている)、買参人(小売りをしている)がミョウバンを使用しているはずは無い。他産地の出荷者が、地元の入札権を持っている中卸、買参人から買って築地へ出荷することがあり、その時点での使用があり得る」と言う。漁が少ない時にまとまった量にするための産地留めによる腹切れ防止のためのテクニックが、常態化して来ているのだろう。

浜名湖産のシンコの産地名が舞阪産となる理由
村櫛漁協・雄踏漁協・鷲津漁協・白洲漁協は、漁獲量の激減による経営の悪化、漁師の後継者不足による高齢化のために、30年程前に浜名漁協に合併され、それぞれが浜名漁協の支所となった。浜名漁協は天竜川の近く、浜松中央卸売市場内にあるのだが、本所が舞阪漁協内にあるために、浜名漁協の魚介類の出荷産地は結果として舞阪産とされるようになった。新居漁協と一緒になった舞阪漁協は外海の漁協として、それなりに漁獲量があり利益を出しているために、浜名漁協に合併されずに独立営業を続けている。

7月24日(月)
 明日、TVG+でシンコの特集をすることになっており、築地のコハダの担当者達にシンコの状況を調べるように頼む。さらに舞阪の中一水産の中西社長にも連絡を取る。本日の各地の漁は最悪の状態になっていると言う。先週の21日に始まった三河湾大浜産のシンコはかなりの腹切れの状態での入荷であったが、本日は風による時化のために出漁なし。天草産はやっと2kの漁獲あり。舞阪産は1.5キロの漁だけだという。舞阪産の明日の値は指値で55,000円。天草が後どのくらい入荷するかでセリ値が決まるだろうと言う頃であった。
7月25日(火)
 舞阪産、指値でキロ55,000円。天草産もう少し入荷がまとまったらしく25,000円。九州地方が連続の大雨の被害にあい、シンコ漁も大不漁の態を見せている。この時期になってもこの相場が付くと言うことは、かってない最大の不漁年となってしまっている。そして今期の大不漁と異常な高値の連続は、天草のシンコにもミョウバンが使われると言う不祥事が発生している。商売最優先の出荷が遂に天草にまで伝染してしまったのだ。では、有明産のシンコを扱うカネ浅井上商店(平成10年訪問)に最後の良心の砦としての望みを託すことはできるのだろうか。

静岡県舞阪漁協
 舞阪漁協は外海と浜名湖との東の接点にあり、外海の遠州灘を漁場としている。江戸時代、舞阪は東海道30番目の宿場町として栄えた歴史を持っている。
 春〜3月1日より春の訪れを告げるサヨリ漁が始まる。引き網漁も遠州灘で始まり、マダイ・クロダイ・スズキ・ホウボウ・ヒラメ・スミイカ・タカアシガニ等が獲れる。
 3月から6月末頃まで、朝5時から昼頃までの初ガツオの(モチガツオ)のケンケン(トローリング)漁が始まるが、今年は大不漁であった。4月から5月末にシラスの春漁の解禁。今期は順調。
夏〜二枚網漁、三枚網漁によるアマダイ・赤ムツ・ヒゲダラ・手長エビ・メジマグロ・シイラ
秋〜シラスの秋漁が11月に解禁となるが、今期は12月に豊漁でお盆の需要期に間に合った。10月1日から2月末までフグのはえ縄漁、6月1日から9月末まではアマダイの2枚網・3枚網(網目2寸5分)漁。
冬〜遠州灘はトラフグのはえ縄漁の最盛期となり、全国一の漁獲量を誇っている。1月から2月、サワラ漁が始まる。
 昨年からの油の高騰は漁業に重大な影響を及ぼしている。1リットル33円から70円に暴騰し、ドラム缶1本が14万円。一回漁に出ると1本から2本。最低20万円の漁がないと赤字になってしまうと言う。

平成18年7月30日

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